PS 100pieces 61-70☆61何処に行っても 鳴かねばならぬ たとえ衆目の刺す 闘いの場でも 何処に立っても 咲かねばならぬ たとえ災禍の残す 痕があっても 「いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」 ☆62 決して開かぬ 扉の前で ただ声を あげたとしても ゆるまぬつがい その音がいかに 美しくとも 哀しくとも 手をかけ足をかけ 息を切らせて 越える巖の 痛みをもってのみ 「夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」 ☆63 それは 私ではないのです あなたの耳に入る おと あなたの眼に映る かたち それは 私ではないのです それは あなたではないのです あなたの喉から出でる 音 あなたの手に触れる 形 それは あなたではないのです 「今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな」2009.09.10 ☆64 コトコトと 寝しなに響く時の声 霧ふかい世にこだまする言伝てか からからと 晴れたかしらに浮かぶ色 耳すませ目こらせ すでにあるものを 「朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木」2009.11.07 ☆65 泣きたくて 掌に覆いかねるほど 瞳ふくらむ 瞼に支えかねるほど 何ほどもない ただ在るのみの身に 火熾し 燃え立つ名を与え まだ先をゆかせる 螺旋の芯 「恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそ惜しけれ」 2009.12.05 ☆66 解るわけがないでしょ 目に映らないんだもの まだ 解ってくれるなんて嘘 だって知らないんだもの 私も 摘まれる花に痛みが無いなんて 誰が決めたの 枯れ急ぐ花に寂しさがないなんて 誰が言えるの 「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」2009.12.12 ☆67 時を遊べば わかるのだから 戯れたって いいでしょう 今を生きれば わかるのだから 恋してみたって いいでしょう 空腕のままに 君を待つ僕 「春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ」 2009.12.25 ☆68 覚えていて また巡り来るまで 待っていて また戻り来るまで 生き過ぎてしまったと 嘆くなら その蒼い瞼に あの月を描いて 褪せぬ光で 照らし染めて 「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」 2010.01.02 ☆69 嵐の夜に 腕を寄せて ひとつ ふたつと 飛礫を放つ さざなみの彩を絹布に写し 沈まぬ錦を散り敷く川面 繰り返し 繰り返し 「嵐吹く 三室の山の もみじ葉は 竜田の川の 錦なりけり」 2010.01.09 ☆70 孤独携え 生きるもの この砂利径に 足踏み下ろす度に 沈む無数の ときを越え 孤独を支え 生きるもの 身を震わせて 肩落とす君から 輝き出でる 哭き砂のおと 「さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮」 2010.01.29 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|